第九九八回 爽快、サンダーバード。


 ――北陸への旅は、やはりサンダーバード。心ウキウキ。そのリズムはブギウギ。



 座席は、太郎たろう君と横並び。そして旅は道連れで……そらちゃんも一緒だった。僕らの行く先は小松。そこに太郎君の会いたいという人がいるそうなの。何でも、昔一緒に遊んだという親戚らしきお友達。と、言っていたのだけど、僕には何となく理解できている。


 可奈かなみたいな存在……


 お友達と言いながらも、お母さんのお姉さんの娘だから、正式には従姉妹となる。


 なら、太郎君にも、可奈みたいな子がいるの? と訊いてみたら、女の子ではなく男の子だよ。……と、言っていた。で、あるなら、お家は何処? ……ササッとマップを広げる太郎君。何故かスマホではなく、紙の地図。星印の付いてある場所がそうらしい。


 幸いにして駅から近い? ……近いと思う。国道へ出る前に着くような感じ……


 すると、いつの間にか太郎君の目の前には、空ちゃんが、フムフムと頷いて……


「空と同じだね、行先」と、言ったのだ。


「空ちゃんのお家……というか、お婆ちゃんのお家だったかな」と、僕は訊く。


陸君りっくんがいるの。空に撮り鉄も、空手だって教えてくれたんだ」と、胸を張り誇らしく。


 太郎君はハッとなる。少なくとも、そんな素振りを見せ、


「空ちゃん、その陸君て子。もしかして鬼嶋きしまっていう名字で、名前がりくって男の子? 今はもう高校一年生になってるとか……」と訊いたの、空ちゃんに。だとすれば、まさかの展開を迎えそうなの。ご察しの通りで「そ、だよ」と答える、満面な笑みの空ちゃん。


「じゃあ、太郎さんって、陸君の……」


「親戚に、当たると思う。小さい頃、一緒に遊んだ」


 盛り上がる会話。そして行先まで、空ちゃんと一緒。もう一つ驚きなのは、空ちゃんと鬼嶋陸君と親戚とすれば、何てことなの? 彼女は太郎君とも親戚ということになる。


「と、いうことだよ。千佳ちかお姉ちゃん・・・・・」とまで彼女は言う。それは、この先を占うような言葉。もうすぐ僕も、空ちゃんの親戚に加わるという意味を含んだ言葉の響きだった。



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