第九八四回 卜部海が知った、あの日の星野さんは。


 ――いつか見た光景。降り頻る雨はなくとも、あの日に出会った同じ場所。



 そして君が言っていた「僕のお家、この近くだから」と。君は気付く、振り返って私の存在に。私の尾行に気付いたの。私も佐助さすけ君のこと言えない程……らしくない。


 マジマジと見る、私の顔? 横にいる男子も一緒に。特に男子の方は、あまり接点はなく初対面に等しい。梨花にしては、いつもと反応が違っているけど、紛れもなく……


梨花りかちゃん、遊びに来たよ」と、笑顔を心掛ける。ちょっとぎこちないかもだけど。


「あ、梨花に用ね。……って、君はあの日の、怪我はもう大丈夫?」


 少し反応に違和感はあるものの、やっぱり梨花ちゃん。でも、梨花に用? って、まるで他人のような? 脳内ではミステリーな展開が繰り広げられ、そんな最中のことで、


「あ、そうか。君は梨花のお友達ってことね。気にしないで、よくあることだから。案内してあげるから、おいで。僕のお家はまた梨花のお家だから」と言ったの、その子は。


 梨花ちゃんと同じ顔をした彼女が、梨花ちゃんの所まで案内しているの。


「……あの、わ、私は卜部うらべかい。あなたは?」


「あ、まだ名前言ってなかったね。制服、同じだから同じ学園の子だね。同じ学年のようだね、リボンの色。僕は星野ほしの千佳ちか、梨花とは双子の妹。宜しくね」と、握手に至った。


 そして見る見るうちに、近付く家……


 印象に残るオレンジの屋根。広い所に住んでいるのね、と、心の叫びも。


 隣にいる男子は、結構イケメン。千佳という子は、梨花とは対照的なのかな? 例えばそうね……百合とは違っているの。梨花ちゃんは自称、百合と言っている。


 それでも同じボクッ娘。区別がつかない程。二人並ぶと、まるで鏡のようで、その空間は不思議な空間に思えた。入学してから半年。この二人が揃うところを初めて見たの。


 そして家の中にも、初めて上がらせてもらえた。其々の部屋が、この二人の個性を描いていた。梨花ちゃんの個性と千佳ちゃんの個性は、真逆といってもいい程の違い……


 並ぶプラモデルと、ファンシーグッズ。でも色彩は明るくピンクとイエローだった。



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