第一四三章 浮上する、もう一つの物語? 合言葉は『海陸空』だ!

第九八〇回 卜部海から見た、星野というボクッ娘。


 ――私が、初めて彼女に会ったのは、降り頻る雨の朝だった。



 この学園に来る前のこと。高校受験を経て、この学園へ来た。入学を間近に控えた日のことだ。今はまだ、あまり詳しくお話はできないけど、ある者に追われていて……


 返り討ちにした後のことだった。


 傷は浅いけど、少しばかり負傷。少しばかり油断した結果だ。


 ……と、いうことで、私は『ほのぼの』の世界にいるキャラではなく、少しヤバい系のキャラなの。よくあるでしょ? 裏の世界。学校の裏舞台に私はいたの。ここまで明かせば察しが付くよね? 私が体術や、武器などを含んでいること。その世界の人なの。


 まるで修羅のような位置づけで、


 復讐に走った中学時代。妹のそらが、不登校になったことがキッカケだ。じゃあその相手は誰? 特定できない程の人数……生徒だけとは限らず、学校そのもののシステム。


 限りのない戦い。


 卒業した今でも、私に復讐しようとする者が後を絶たない状況。ある人が言っていたのだ。この学園を受験した方が良いと。その人は先生と名乗る人だった。もう戦いのない世界へと身を躍らせるために、私はその人が導いた通りに、この学園を受験した……


 そこで私の身の上話は、


「怪我してるようだけど、大丈夫? それにずぶ濡れだし……」との、彼女の言葉によって途切れ、この雨の朝のシーンに戻った。これが、彼女との出会いだったのだ。


「構わないで……」と、私は言うも、彼女は「じゃあ、傘貸してあげる。気を付けて帰るんだよ」と言って、強引にも私に傘を持たせた。


「僕のお家、この近くだから」と、その言葉をもって走って行った。ボブの髪や特徴などを記憶するも、名前は訊かなかった。私も名乗らなかった。……ただ、彼女が手を振った時に見えた左手首の傷跡は、残った。印象に。また会いたいと思える程に……


 そして彼女の一人称は『僕』……ボクッ娘ということも手掛かりとして心に刻んだ。



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