第九七九回 群青色のお空と海。波に戯れる白い裸体。


 ――夢中から、白い裸体の火照りを潮風が冷ます余韻へ変わる時刻。



 でも、お腹に躍動感が残る。女の子だから感じる、一つになった証。


 言葉を越えたような感じの、微笑み。言葉にできたのが「好き」という一言で、そっと重なる唇。今度はソフトタッチ。荒波から細波に変わる頃を迎えていたの。見える広大な群青色は、吸い込まれるような、そんな感じ。きっと夜明けへ変わる前触れ……


 夜が明けたのなら、僕らはここを出発する。それを惜しむように少しでも。喩えるならば、朝起きる際の『あと五分』という台詞に似たり。抱き合う裸体同士。潮風に吹かれながら、交わす言葉を捜すように、温もりを求め合っている。キスで埋め合う余白。


「……いっぱい、しちゃったね」


「もう何も考えらえないくらいに、ぶっ飛んだこと。学校行事の最中で……」


「あー、太郎たろう君が僕を押し倒して強烈なキスしたからでしょ」


千佳ちかが服脱ぎだして全裸になるから、引っ込みつかなくなったんじゃないか。ただでさえお預けだったから、女には解らない男の事情ってものが……って何言わせるの」

 と、そんな太郎君の顔を見ていると、クスッと笑えた。


 とても面白い顔というよりかは、何に笑えたのかなんて、どうでもよくなっていた。


 そして、噂のことも……


 いつしかこの、群青色の景色が変わるように、夜明けと共に晴れることだろう。すくっと起き上がる僕。そして波と戯れる。ちょっとした水遊びも嗜む。とても気持ち良く、


「千佳、そろそろ服着て戻らないとだな……」と太郎君が言うも、


「太郎君もどお? 極上の開放感。まるでお魚になったみたい」と、感想を述べたの。


 程よい温度。ちょっぴり冷たい感じだけれど、それがいい具合に。


「それを言うなら、千佳はマーメードみたいに綺麗だ」と、どさくさ紛れに言うから、


「えっ、エヘヘ……」と、言葉にならずも嬉しい一言。


 この過程を経て、僕らは宿舎に戻った。起床までには時間があるから、其々の……



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