第九七八回 そして二人ボッチ。お空に満天なお月様。
――暗い海辺も、少しばかり明るくなったような気がするの。
朧気だったお月様も、いつしか満天なお月様へ変わっていた。でも……沈黙は続いている。二人横並びで遠い目をして見ている、お月様が浮かぶ黒い海。波の音も静かだった。
僕は、忘れていた、
一緒に肝試しで行動を共にする予定だったのだけど、僕は犯人捜しで頭いっぱいで、尚且つ昨日も……良いムードだったところを
砂浜に、僕を押し倒し、
そして激しく、長いキス……
僕はジタバタして、ドンドンと太郎君の胸を叩いた。息苦しさに、声が漏れた。
「ブハッ」と唇を離し、涙が零れるのも感じて、
「ちょ、何するの、急に?」と、僕は咽ながら言った。すると太郎君は「お預けだったのを忘れられたんだぞ。それよりも、何で俺に一言もないんだ? 昨日この場所で『ずっと俺の傍にいろよな』と言ったばかりじゃないか。それを思い知らせてやるからな」
と、怒った口調だった。……でも、温かかった。僕を心配していたのは
まるで引き寄せられる波のよう。僕もまた激しく、太郎君を感じたい。だから「思い知らせて。僕のすべてに触れて欲しいの」と、狂おしい程に高鳴る鼓動は、艶っぽい吐息を誘う。全身が熱く、心までも裸に……ザザーンと響く波の音は、これから二人が愛を確かめ合うのに、充分すぎるシチュエーションだった。
「
「ウフフ……見せつけてあげる。包み隠さず全部、満天なお月様に」
まさに自然の摂理。僕と太郎君がお魚になったように、感じる体温、息遣いも。お互いが夢中に抱き合った。時の流れをも超越したような世界の中に。二人だけの世界に……
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