第九七〇回 駆ける星の少女。キラリキラキラ。
――まるで彗星のように、夜の静寂を駆け抜ける。僕の名字は
そして
波の音……
これ以上は近付けない、三人だけの空間。今は、見守ることしかできずに一喜一憂。それは梨花の言葉にあった。ここからは僕らの問題だと。そして「
すると何? 梨花が走り去ってゆく?
ということは、こちらの方に向かってくる。
それでもって佐助君、海と手を繋いでいる。月明かりが照らしていた。何があった?
「梨花、待って」
僕は捕まえる。手を掴んだ。すると、梨花は泣いていた。「フラれちゃった」
……と言って。まさか……とも思ったけれど、梨花の涙が語っていた。掛ける言葉を求めるにも、どう声を掛けていいのか? 佐助君は絶対に、梨花のことが好きだと思っていたから。太郎君の時もそうだ。僕に譲ったようなもの……と思いかけたら、
「それはないよ。千佳がそんな風に思ってるなら、僕は千佳を思い切り引っ叩くから」
と言ったのだ。泣き顔だけど、怖い顔だった。
「佐助君、あんなに梨花のことが……」
「あくまでお友達だったの。僕が思い込んでただけで。やっぱり長いこと一緒にいた時間には敵わない。海ちゃんは中学時代、水泳部で佐助君と一緒だった。その頃から……」
岩場の陰。誰にも見付からないように、僕と梨花は波音を聞きながら、並んで座る……掛ける言葉も見失ったまま。でも「お友達なら今まで通り。今まで通りなんだ。海ちゃんには進んだ道。二つ手に入ったんだ。今まで通りと失恋も」と、梨花は毅然と言った。
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