第九六五回 窓のお外は。
――光る海!
ついに来たのだ。バスは僕らを乗せて。もう海に夢中だ、皆が皆。
車内にはクラスの皆。そして
その時以来なの。
きっと、令子先生が一番感激していたのだと思われる。
あの頃は、もう二度と訪れることはないだろうと、そう思っていた。不治とも言われていた心臓病からの奇跡の生還。噛み締めるように踏み締める砂浜と、また会えた、寄せては返す波。涙する程に喜んでいた。……そこで瑞希先生は言ったの、令子先生と並んで。
「西瓜の薫りがする」……と。
しかも、そのタイミングで鳴る、瑞希先生のお腹。
まさかの展開なの。シリアスな場面を一瞬にして、コミカルな場面に変えたのだ。
「ちょ、ちょっと、瑞希……」 と、いつも温和で満面な笑みの令子先生も、この時ばかりは……と思っていたのだけど、
「楽しも、今この時なんだから」
と、瑞希先生は言葉を繋いだ。僕だけではなく、そこにいた皆が皆、一喜一憂しながら見守っていた。そんな中で、令子先生は深く息を吐くて、
「そうだね、西瓜割り。やってみようか」と、いつもの笑顔に戻って言った。
「いいね、いいね」と、瑞希先生は大はしゃぎ。僕らもまた、同じ思いなの。
思わぬ幕開け。今の時点でも。
だからこそ楽し、臨海学校。ついに幕開けだ。
七月のビッグイベントは、騒めきの中で始まっていた。まずは宿舎に向かう。荷物も生徒諸君と声を大にする先生方の挨拶も兼ねて。各自のお部屋も拝見するのだ。
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