第九六三回 濃い青色のお空。七月で一番に暑い日。
――まさに炎天下。お空が燃えているような感覚だったの。
だからこそ、避暑地を捜している。少しでも木陰な場所を。児童公園はもう過ぎていたので、歩いて歩くカントリーロード。揺れる二つのシルエット……僕らからは見ることはできないけれど、立ち上る陽炎の中、僕らの姿が見えている。
僕と
「散歩じゃないの、こう見えても列記とした……」
「デートだよね、太郎君。ほら、見て見て、青い空に白い雲」
「ちょっと違う気がするけどな。白い雲はなくて青一色。それも濃くベタッとした青。それにネタが古いんだよ……って、それ俺も知らないよな。昭和には生まれてないし……」
「もちろん僕も昭和には、姿形もないんだよ。すべてはテクノロジー。ユーチューブの世界だよ。それに今は映像も綺麗で鮮明なんだから、某ドラマシリーズのEDなんだから」
思い起こせば、第一回のウメチカ戦でも、脳内を流れる音楽は『激闘編』
やや同じ時期のように思える。シリアスなドラマも、お茶の間に溶け込みやすくするために、ソフト路線の変更が目立っていた時代。お母さん世代のファンも多かったそうだ。
……と、言いながらも、暑い! すると、カランと涼しさを誘う効果音。
「駄菓子屋だ!」
と見事なる合唱。夏といえば、やっぱりラムネ。昔は瓶でビー玉だったという。今はどお? プラスチックのような簡易性……軽いのだ。じゃあ効果音は何処から? それは風鈴。奏でたということは、少しばかり風はある。涼しさを誘うには充分なシチュエーション。二人一緒に飲む。炭酸の刺激で脳が冷える。脳は身体を制御するから。
明日の今頃は、僕らは汽車の中……ではなく、やはりバス。海へ向かう。遂に幕開けなの、臨海学校の。今日はその前日で、準備を兼ねている。デートのようだけれど、最高のシーンを飾りたいから。夕映えの海辺で寄り添う二人……そのシーンを飾りたいの。
その時に、太郎君に言って欲しい台詞かあるの。もう想像するだけでトキメクの。
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