第九五七回 続きは、また再開される。今この時に。


 ――思えば、サブタイトルが五七五。読点と句点を除けば。



 続きというのは、梨花りか佐助さすけ君のことだけど、僕は梨花の妹という立場から見る。僕らがまだ出会ってない時だ。そして僕と梨花が双子だということも、知らなかった頃。


 小学四年生の夏休みから二学期にかけて、梨花はこの地にいた。


 でも、この頃は、僕と梨花は巡り合っていなかった。かなり近くにいたそうだけど、同じ小学校……ではなかったから。ほんの一筋違いで擦れ違い。見知らぬ二人だった。


 夏休みは、ふるさと祭りで学園へ。


 実は、それが運命を繋ぐ始まりだったのかもしれない。梨花にとっても、そのふるさと祭りが縁で、学園に入学したと……可奈かなが言っていた。ならば、佐助君はいつから、


 学園にいたのだろう?


 そう思っていると、背後から「高等部入学を機に」と、囁くような声が聞こえた。


 背筋が凍るとはこのこと。振り返れば、そこに佐助君がいた。その距離感は、ほぼ密着に近い。気配も感じなかったの。そして続けて彼は言う。「あっ、悪い。驚かせて」

 と低い声。彼はテノールだろうか。でも、魅力を感じる低音。


「梨花は? それに彼氏は、今日は一緒じゃないのか?」


「僕も捜してるの。僕のスマホ持って、そのまま消えちゃったから。太郎たろう君から待ち合わせの連絡も入ってくるからスマホに。君も手伝ってくれる? 二人なら早いと思う」


「それはどうかな? お前は俺のように忍者じゃないし」


「君、先輩に向かって『お前』はないんじゃない? 僕は『千佳ちか』という名前があるんだから。まだ優しい方だよ。梨花は僕よりももっと厳しいんだから、そういうの……」


「じゃあ何か? 上様とでも呼べというのか? 今までは『星野ほしの』で通じてたんだ。お前が現れたから、ちゃんと『梨花』って名前で呼んであげてるんじゃないか。俺にとっては『星野』と呼ぶ方がしっくりくるんだ。『梨花』と呼ぶより『星野』と呼ぶ方がな」


 ……僕は、少しの間、佐助君と行動を共にするのだけど、大丈夫なのだろうか?



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