第九四八回 自由人。


 ――そう書いて、フリーマンと呼ぶ。



 それは、誰のことを指しているのだろう?


 それは、まるで鏡……


 まるで鏡を見ているような、僕とソックリな女の子。そして……


 久しぶりに読んだ、その子の作品。共に過ごした『りかのじかん』

 彼女は極めて近い存在。そして、極めて遠い存在の自由人だった。


 それは出会ったばかりの梨花りかの印象。僕とは対照的に明るかった。お友達も一緒にいたから。それも下の名前で呼び合っていたから、ボッチとは無縁だと思えたの。でも彼女たちは受け入れてくれた、僕のこと。平等な位置付けで、とても優しく接してくれた。


 梨花たちのペースは、僕をも自由にした。学園に登校してみると、楽しさで満ち溢れていた。それまでとは……不登校になる前とは、急に世界観が変わったような感覚だ。


 僕が初めて味わった感覚。ううん、本当は、


 遠い昔、まだいじめを知らなかった小学生の低学年の、あの感じに似た懐かしさ。学校が楽しかった頃と、また出会えたから。だから僕は、そう感じた時に薄々とながらも伝えたかったのだと思うの。学校は、本当は楽しい所なのだと……


(きっと、そう伝えたかったんだね、旧一もとかずおじちゃん)と、その思いが心に染みる。


 僕だって同じ思い。書き続けるエッセイも、


 そして、心の奥で目覚めた『先生になりたい』という沸々と湧きたる思いも……


 それが旧一おじちゃんの願いと気付いた時、大きな波が押し寄せた、僕の心の中で激しくも、自身の使命の大きさに、慄きつつも感極まっていた。


 じゃあ、どのあたりからそう思ったのか? 実は言うと、つい最近の話ではなかったのだ。なので、日々のエッセイの中で、少しばかり想い出に浸ってみた。


 梨花について……


 梨花は憧れていた、瑞希先生に……



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