第九四五回 影の、とある人物とは?


 ――それは、ティムさんが言っていた『とある人物』のことだ。



 学園の正門付近にある、用務員室というのか警備員室というのか、宿直室とも呼べそうな、そんな役割のお部屋。「とある人物の意向により設けられた」と、ティムさんは言っていた。しかしながら、とある人物とは誰なのか?


 それがわかったのなら、その目的だって見えてくる。真の目的。学園を良くしたいと思う志は、きっと『とある人物の意向』と同じだと思われるから……


 そのための組織は、実は言うと数多く存在していたそうなの。


 でも歴史は繰り返している。生徒会には、やはり表側と裏側が存在している、過去から今現在も。いじめも、陰に隠れた犯罪も……実際はなくなってないことが見え隠れ……


 松近まつちか君の様子から窺っても、そんな気配も薄々とは感じ取れる。彼と同じグループに所属している千歳ちとせちゃんも菜花なのかちゃんも、以前に増して険しい表情を見せることもあった。


 つまり彼らは、裏に所属する生徒会。暗部組織とも噂されている。


 そして僕らは、表に所属する生徒会。手を差し伸べようにも、表裏一体の道程を手探りで行っている段階に過ぎない。情報の共有は一部の人間だけで……僕らにその情報は流れてこない。会長のせつでさえも、得ることのない情報だからなの……


 そんな思いを抱えていた夜、僕は、お母さんに「話がある」と言われ、和室へ。それも二人きりのお部屋。僕は思い返す……(何か悪いことでもした?)と、自問自答。


千佳ちか、学園の先生になりたいんだってね」


「……反対なの?」


「そうねえ、お母さんとしては、可愛い我が子を思えば」「僕だって考えたんだ。お母さんが何て言っても」「そうだと思った。千佳のことだから、しっかり見据えてるんだね」


 ――未来を。そして語る、お母さんが。……僕がこの選択に至ったことで、伝えたかったこと。お母さんも、お母さんのお姉ちゃんのこと、つまり可奈かなのお母さんのことも。


 お母さんは昔は保育士で、可奈のお母さんは昔、小学校の先生だったことについて。



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