第九四四回 早くも梅雨入り宣言か?

 

 ――そう思っていたら、またお空は快晴。



 五月晴れと五月雨の両立に過ぎない。春でもなくまだ梅雨にもならない半熟な季節。


 それでも確実に、六月は近づいてくる……


 夏の扉を開けたのなら、そこはもう渚のバルコニー。少し未来にある夏物語だ……


 そのイメージは、まだ未知の世界の臨海学校。少しばかりキャンプの要素も入るの。


 僕は楽しみにしていた。小さい頃からキャンプは憧れだったの。その頃に夢見ていたのはパパとのキャンプ。まだ母子家庭だった頃に見た、幼き頃の夢だった。それさえも、叶えられるの? あの雷の日に交わした言葉。……僕は言ったのだ。


「臨海学校、ティムさんも一緒に来るの?」


「実はそうなんだ。学園のお仕事で、役員という役割で。……それもまた、とある人物の意向なんだ。夜は、自由だから。ここによく似た施設も向こうにあるから。その時は」


 ――親子水入らずだな。


 グッときた。何も語らずとも、ティムさんは僕の思っていることを見抜いていた? いや僕自身もまだあやふやな思いのその奥を見抜いていた。ティムさんは、僕のパパだった人。「この一夜は、千佳ちかのパパだから。パパとして、し残したことができる一夜だよ」


 ……と、付け加えたの。


 その言葉に意味とは? その夜に明かされる予定になった。それまでは、まだ謎だ。


 そんな思いも含めて、六月にはプール開きがある。


 漸く堪能できる夏。この学園に来てから、僕は泳げるようになった。それまでは泳げなかったのだから、本当に、幼い日からの夢を次々と現実にしているの。


 この物語の始まりから、パパを手に入れ、実のパパと姉とも出会えた。再会と呼ぶには記憶にはなかったのだから、敢えて出会いという表現にした。……そう、出会いから。


 ウメチカという場所で、僕たちが出会ったことによって、この物語は始まったのだから……そこから繋がっていった物語。始まりは、僕とティムさんとの出会いからだった。



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