第九四三回 では、その目撃者は誰?


 ――正門付近にある、このお部屋のことなら、僕ら二人。



 でも、少し違うみたい。


 軋むだけで済まなかったドア。開いた。そして、しっかり見られた。


 現実の中で起きたこと……


 夢現な感覚だけれど、しっかりと受け入れられた。僕は見る。迸る光をバックに、そこに立っているティムさんを。次に思えることは(どうしてティムさんがここに?)


「あ、ティムさん……」


千佳ちか、どうしたんだ? 何があったんだ?」


 と、チグハグな会話と反応。お互い、どう反応していいのか困惑を極めていて……置いてきぼりとなった太郎たろう君。ティムさんの目には、僕しか映ってないようだから。


「あ、雨宿りだよ……

 た、太郎君も一緒なの。僕の探しものに付き合ってくれて、生憎の大雨で。出るに出られなくなっちゃって、暫くいていいかな?」と、その言葉の後だ。


(どうしてティムさんに訊いたのだろう?)と、そうも思えたの。


「いいよ、雨が止むまで。今日は、ここにお泊りするから。新しい職場になったんだ。君たちを見守れるようにと。太郎少年が千佳を守ってくれているように、雷からもね」


 にこやかな雰囲気に包まれ、


 先程の、雷の光景が嘘のように、温かなものとなった。空気も変わった。……それはまるで、あの時と同じ。僕の脳内の色が変わった瞬間。この物語を始めた時と同じ感覚。


 すると、ティムさんは今……


「用務員、というのかな? 警備員のような役割だけど。因みにこの場所も同じく用務員室なのか、警備員室なのかは未だ明らかではないけど、そんな役割の部屋。まあ、千佳が知らないのも尤もで、ついこの間にできたから。とある人物の意向によって誕生した」


 だとすれば、動き出しているのだ。学園改革のため、生徒会以外でもまた……



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