第九四二回 稲妻のその先には何が?


 ――梅雨入り宣言を兼ねた、春の嵐。そして夏の扉が待っているようだ。



 春も終盤。午前零時から降る雨が、それまで待てずに今、降っているの。夕映えから夕闇に変わる境の場所で。小雨だけれど、徐々に激しさを増してきた。なので、早速……


「よし、そこで雨宿りだ」


「うん」


 という具合に、交わされる会話にも満たない掛け声の部類。なら、何処で雨宿り?


 実は、見知らぬ場所。学園の正門付近にある場所だ。


 七不思議の部類に入れても引けを取らない程の場所。僕の場合、中等部からこの学園に通っていたにも関わらず、未だに謎な場所。あまり意識をしていなかったから、改めてその不思議さを実感した。太郎たろう君が、その一言を言ったばかりに……


 雨宿りしている場所、まるで宿泊施設のような一室。


 こじんまりしているけど、一泊するには不自由なく過ごせそうな場所だった。


 生活感は……ある。じゃあ、誰かいたってこと? でも今は触れない。僕がそう思っただけで、太郎君はそう思っていない様子。何の警戒もなく、寛いでいる。なら僕も……


 寝転がる。太郎君の傍で。


「エヘヘ……」


「ちょ、千佳ちか、近い近い、ここは学園だし」


「誰もいないよ。僕と太郎君だけ。それに」


 ――光ったの、お空!


 その後に、ドーン! と大きな音。


 間隔は殆どなく結構近いような感じで、ピタッと引っ付く。しがみついていた。


「雷、苦手だったのか?」


「そうなの、梨花りかと違って大の苦手。暫くこのままいて……」


 その時だ! 僕と太郎君以外に誰もいないはずなのに、音が響いた。ドアの軋む音が。



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