第九四〇回 ある晴れた昼下がり……と、その前に。
――見えるものは、白い世界。お外から遮られた静かな場所。ここは保健室。
どうしてここに? 極端な場面転換に驚くも、身体が重く……何か鉛でも仕込まれたような? 息も少しばかり苦しく、汗ばんでいる体操服。確か、体育館にいたの。
つい一コマ前は、体育の時間。
白いボールが舞う世界。そして何故か、宙を舞う女の子が二人。どちらが決めたか判別できないアタック。二人は空中で交差しているように飛び上がっていたから、喩えるならXを描いていたの。誰かが言っていた、魔のX攻撃と。……すると何? 見えるものが白く覆われて、いきなりここにいたということなの。静かな時間……
それも束の間でアマリリス。授業終了の合図で中休みに至る。
するとどうだろう? 喋り声が聞こえ始める。足音も、タップダンスのように規則正しくも近づいてくる。それから間もなくだ、シャーッと音を立てながら、カーテンが開く。
「
と、
「ホント驚いたぞ、急に倒れるから。……でも、まだ顔色は良くなさそうだな。もう少し休んでから帰るか? 荷物なら持ってきてるから。俺も終わったら様子見に行くからな」
と、太郎君は言ってくれた。
「熱は……微熱だね。風邪かな、気候の変動が激しかったから。僕も、体調がイマイチなんだ。……じゃあ僕も、千佳と一緒に早退するから一緒に帰ろ。千佳一人じゃ心配だし」
と言う梨花も、しんどそうだし。正直その方が助かる。今の状況だと、一人で帰路を歩むには心配だから。帰ったら、さっそく病院に行くことになりそうだし……
「じゃあ着替える……」
と僕がそれだけ言うと、太郎君は「あ、そうだな。じゃあ、また連絡するし」と言い残して、この場から去った。着替えるも、ふらつく足元。梨花の肩に掴まった。
……そして静かに、僕らは一緒に保健室を出て、ゆっくりと帰路に就いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます