第一三五章 五月は星のプリンセスと銀河通信だよ。

第九三六回 時は中間考査。帰ってからのお楽しみ。


 ――各学期には各教科が二回、大きな試験がある。中高一貫の大イベントだ。



 中間と期末。その繰り返し。高等部になると、単位というものが存在した。すでに一年を迎えた高等部生活だけれど、今更に、それを実感した。……何しろ、コロナ緩和によって、今が通常なのだから、何というのか、現実を突き付けられた気分。


 別に赤点と言うわけではなく、ギザギザな成績ではあっても平均点には至っている。或いはずば抜けている教科もある。噂によると、瑞希みずき先生も学園時代は同じだったそうだ。


 しかしながらこの度の中間考査はまだ最中。


 午前中で試験は終わる。これが一週間続く。なら、午前の風の中で帰り道だ。


 ちょっとしたワクワク感。早く帰れるということが楽しみの一つだ。それはまた梨花りかも一緒。それだけではなく皆も皆。まるで集団下校のような感じになる。


 この時ばかりは……


「懐かしいね。千佳ちかとこうして一緒に帰れるの」と、りんも歓声を上げた。そうなの。凛とは小学生の低学年の頃に同じ学校の同じクラスだったから、その記憶が蘇った。


 なので、凛は満面な笑顔で、


「お昼から来るね、千佳たちのお家」と言ったの、別れ際。電車の中。


 凛の最寄りの駅は、僕らの最寄りの駅から二駅先だった。「じゃあ、またね」という言葉を交わしながら下車した。実は「今日も」という言葉が付け加えられるのだ。


 凛の目的は多分、僕らと一緒に試験のためのお勉強ではなく……実は、エックちゃんと遊びたいが全面的に現れているのだ。あの満面な笑顔に。そしてお昼から来るのは凛だけではなく可奈かなもなの。可奈が言うには、凛の暴走を止める役割で必要だからと、自ら決心したのだ。凛がお勉強そっちのけでエックちゃんと戯れるから、可奈が心配したそうな。


 それで、エックちゃんは誰が面倒見るのか? もうその問いは察しの通りで、


 あの日から、僕ら星野姉妹の役割となった。凛は残念がっていたけど、何故か可奈が決めたことなの。えっと……あの時、現場に居合わせてはいなかったバスなのだけど……



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