第九三五回 戯れる起動戦士たち。


 ――押したのだ。


 起動スイッチらしきものを翔さんが。すると、音を立てながら……



「動くぞ、こいつ」との台詞通りに、ミラーボールのような謎の物体Xは、宙には浮かび上がらなかったものの、怪しくエメラルドに光り輝いた。ピカーン! と、音声付き。


 そして開いた、オープンした。まるでハッチが開くように……


 ではなくて、もっと大胆に、真っ二つに割れた。まるで桃太郎の桃のように。その姿を目撃した。僕も梨花りか太郎たろう君もりんも、そしてしょうさんも。


 特に翔さんは、開いた口が塞がらない様子。Xの文字が光り輝いていたの。それはその生物特有なものと、自然に思えた。この様子から察するように、僕らは目撃したのだ。


 未確認飛行物体の確認に成功して、


 更に更に、確認を施したことによって、未確認ではなくなった飛行物体の中にいる、生物を見ることになった。特徴は……額に輝くXという文字。生まれつきなのだろうか?


 僕は、身震いする程に、


「可愛い!」と、歓声を上げた。そっと抱いた。


 大きさは、チワワちゃんのよう。円らな目に、サラサラな毛並み。ペロペロ舐める僕のお顔を。見た目は、どう見てもワンちゃんだけど、どの様な生物かは未確認だったの。


「おい、千佳ちか、大丈夫なのか?」

 と、恐る恐る訊く翔さんに対し、


「心配ないよ、本当にチワワちゃんだし。ちゃんと血統書も添付されてたから。でも、持ち主さんは不明。もしかしたら宇宙から来たのかもしれないよ、千佳」

 と、冷静沈着な上にユーモアも忘れない梨花は、まさに最強の戦士。


 機動戦士ならぬ起動戦士なのだ。……あ、でも、起動したのは翔さんだった。ならば皆が皆、起動戦士なのだ。そして名前を付ける儀式。割れたミラーボールのような謎の物体Xを中心に、大きな穴に集う僕ら五人が『エックちゃん』と名付けた。……さてさて。



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