第一三四章 GW明けのその先に。

第九三一回 雨がシトシト日曜日。


 ――今年は雨のGWゴールデンウイークと、連休前に告げられた天気予報だったけど、三、四、五日は夏日のような天候だった。広がる青空の下、僕は日々誰かと関わっていたの。


 ボッチだった頃には、想像できなかった日々。関わる頻度はGW故に太郎たろう君が多い。今年もまた鯉のぼりが、お空を泳いだ。太郎君のお父さんもお母さんも一緒に、太郎君と見上げて、柏餅などお茶を御馳走になった。もうすっかり御馴染みの域で。


 リビングというにはあまりにも和の雰囲気が強いお部屋の中、卓袱台を所狭しと囲んでいた。弾むのは、お話だけではなく笑顔までも。とても温かな家庭なの。


 そんな中、僕の脳内では学園のことがチラついていた。今もそう。


 この学園に入る前は不登校児だった。でもどうだろう? 今思うと、学校が嫌いではないの。お勉強だって、嫌いではないの。不思議だった。思えば思う程に。


 そして幾度も浮かぶヴィジョン。

 それは何? 子供たちと関わる姿。なら、僕は……


 すると、ハッとなる瞬間が訪れて、


千佳ちかちゃんなら、いつお嫁さんに来ても大歓迎だよ」

 と、太郎君のお父さんが唐突に言った。……というより僕が思考に夢中で聞いてなかっただけに、そのビックリも半端なかった。それに太郎君のお顔も真っ赤で、まるで茹蛸。


 そして太郎君は頭の天辺から白煙。或いは湯気を吹きながら、


「そうだとも千佳、もしお前に子供ができてたとしても、俺は責任も、それどころかお前と添い遂げる。家族三人、双子だったら四人か、俺は守る、家庭を、絶対に」


 と、仁王立ちして言い放ったのだ。僕は座っていたので、下から見上げる格好となったのだけど、握り拳に、その……鼻の穴が広がっていて、悪いと思ったけどクスッと……


 笑い声が漏れちゃって。そんな一幕が雨音と共に思い出されたの。その日は五月五日で今日は七日の日曜日。明日から平日通りに学園に通う。お勉強を頑張ろうと思った。


 もうすぐ中間考査。


 そしてその先にある、まだ具体的に見えない十年後とかの、将来のためにも。



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