第九二九回 止まらない未来を歩みつつ。
――稽古不足を幕は待たずに、この日が訪れた。つまりは当日。
各クラブのアピールの日。体育館に集まる生徒諸君。その主催者は生徒会に一任されていた。そして
「よろしくね」と一言、笑顔で迎えてくれた。
僕には強い味方。皆にとってもきっとそう。
駆け足で進んだ練習の一週間。足りない部分は本番で、皆で支え合う。チームワークが要となるのだ。僕は
「どうしよう、頭が真っ白に」と、涙ぐんでいた。
いつも気丈な彼女を見ているだけに、あまりのギャップに……そっと手を差し伸べる。
「大丈夫。いざとなったら僕も、怜央君も、君の傍にいるから。葉月ちゃんは元気よく原稿を読むことに専念して。盛り上げるのは、僕らの役目だから」と、僕は毅然と言った。
とはいうものの、自分で毅然というのも変だけれど、この時の僕は胸を張っていた。この二人を包み込める程の、自身のスケールを広げていたから。僕の傍にも仲間がいる。
愉快な仲間たち……
生演奏を披露する。これもまた同じ舞台で。ピアノとヴァイオリンのコラボ。静かなる調べから始まるも、その力強さは深い部分にあった。演奏はもう始まっていた。
何しろ、芸術部のアピールが一番目だから。
他のクラブのアピールを研鑽する間もなく、まったくのオリジナル。だからこそ冴えるピアノの
シャルロットさんが言っていたことだ。その言葉を、さり気なく残してくれていたからこそ、今のこの舞台が実現できていたの。今はまだ、演奏は始まったばかりだ。
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