第九二五回 そして巡り巡るも……やはりこの場所に辿り着くの。


 ――この場所は、やはり僕にとって原点なのかな? 初めてこの学園に来た時も。



 その場所は芸術棟。


 そして、この学園で最初に出会ったのもこの二人だ。梨花りか可奈かな……あの頃は演劇部の助っ人だった。その演劇部は姿を変えて美術部と合体。芸術部として再出発したの。


 でも今は? 葉月はづきちゃんと怜央れお君の二人だけだった。


 僕ら三人も、かつては部員だったけど……いつしか疎遠。ごく自然に無所属で、生徒会になってここを訪れた次第。そして去年の秋に新入部員が入ったものの、生徒会がらみの別の組織での活動に没頭しているうちに疎遠となって、本年早々に退部していった。


 このままでは……


 芸術部も存続の危機になる……


「って、どうしてくれるんです? 困ったら助けるとは言っても、元はといえば先輩たちにも原因があるんじゃないですか。あまりにも中途半端で身勝手だから……」


 と、葉月ちゃんは怒っていた。


 確かに……僕はやりたいことがあったから退部したけど、可奈も天文部に入ったことが理由だから、其々の道を束縛する権利などないのだけれど、……梨花は? 何が理由?


「ちょっと梨花、確か残ってたよね?

 僕と可奈が退部した後も。恵比寿えびす公太こうた君と二人で一緒に。あれからどうしたの?」


 と、僕は問う。……まあ、今更だけど。


「何々? 千佳ちか、僕に責任転嫁するの? 僕だってやりたいことあるんだよ。千佳や可奈よりも後になっちゃったけど、正式に退部だってしたんだから……三学期の初めに」


「ちょっと語尾に何か? そんなこと、僕に一言もなかったじゃない。公太君とはどうなったの? 何だか恋仲になりそうだったじゃないの? 何があったの? 本当に」


「千佳、何熱くなってるの? 別れたの。恋仲ってわけじゃないから。あくまで先輩と後輩ということ。普通のお友達の関係なの」と、梨花の声も大きくなっていた。



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