第九二四回 切って落とされた幕。レッツ・スタートとの密な関係とは?


 ――朝まで待てない春雨の向こうに、広がる青いお空。そして、緑の本格的な春。



 出会いの春から進展した、躍動する春の物語へと切り替わる。


 つまり桜色の春から、青色の春へ変化する瞬間だ。僕らはその機会を見逃さない。今こそ僕ら生徒会の出番だ。学園の皆が青春を謳歌する瞬間なのだ。


 現場百回という言葉がある。

 つまりは見て回る。僕は学園にあるクラブのすべてを知っているわけではないけど、何か感じ取れることがあったら良いと思う。本当なら手伝ってあげたいけど、事情もわからず手を出すと邪魔になりかねないから……見守る勇気。と、密かに心の中で思うと、


「それだけじゃないよ」と、声が聞こえた。「へっ?」と、振り向くと、


千佳ちかにはあるじゃない。見るだけじゃなく書くことも……」と、そっと梨花りかは言った。


 共に徘徊し、共に見て回っていた。そして僕らは同じ生徒会の風紀委員。可奈かなも含めて三人。こうして、あの始業式の次の日から学園内を見回っていた。だったら……


「梨花にもあるじゃない。見るだけじゃなく書くことも……」と、そっと僕も言うと、クスッと笑い声が聞こえた。その主に向ける視線は、梨花も僕も息ピッタリのタイミング。


「何々? 二人して全く同じだから」


 と、可奈は言う。「なら、これはもう共同作戦ね」と、笑いも付け加えながら。


 僕と梨花、お互いが顔を見合わせながら「共同作戦?」と、声にした後、再び可奈の方に顔を向けて……「そっ、共同作戦。思い出してみて、KACでしてたこと」


 ――いつも二人だった。


 梨花が案を出して僕が書くというわけではないのだけど、二人で創り上げてきた。僕一人ではできなかったエピソード。でも、梨花と一緒だからできていた。いつからだっただろう? このようなスタイルになったのは? すると……


「やろう、千佳。僕らの青春謳歌のエッセイを」と、梨花は力強く……


「うん、梨花も一緒だよ」と、僕らは手を取り合った。こうして始まったの……



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