第九二二回 トキメキの渦中で生徒会は始動。


 ――春のトキメキ。


 それは、出会いの季節だからだろうか?



 この先にある出来事に対して。今この場に集う体育館から新学期の御挨拶。僕ら生徒会も舞台に立つ。身の引き締まる思いだ。……でも何故だろう?


 演台に立つのは僕だ。これからマイク越しにお話するのも。


 普通なら会長のせつが、ここに立つはずなんだけど、どうして僕が? その仕掛人は身近にいる。怪しいのは梨花りかだ。通りで手回しの良い原稿。まるで僕の考えていることが理解できてなければ書けないような内容。しかもしかもしかもだよ、文章もまるで僕……


 見た時、本当にそう思った程。


 でも、しっかりして。


 それを書いたのは、いくら瓜二つでも僕とは違う人間だから。


 それを今から読み上げるのだ。マイク越しに。全校生徒の前で。夢にも思ってなかったことだったの。夢にも……不登校の末、この学園に編入してから、通うのもやっとだった僕が、今皆の前で読み上げている。原稿を。違う人間が書いたのだけど、名前は……


 星野ほしの千佳ちか


 僕の名前になっている。


 決して見間違えでもなく、夢でもなく「痛っ」と、ほっぺた少し叩いたら本当に。その時の皆の笑いも本当に聞こえてきたから。しかもこの原稿、PCとかで打ったわけではなく手書き。筆跡も鑑定できる、……筆跡までも酷似だから。


 それができる人間なら、ただ一人だ。


 梨花しかいない。同じ舞台の隅っこに、摂たちと並んで立っている。


 そのアイコンタクトは、声援にも似たもの。見守ってくれているの。


 そして読み上げる。しっかりと視線たちが集中する。全校生徒が僕を見ている。あとで知ることとなるけど、――ほんのりスマイルの良い顔だったそうなの。



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