第一三二章 陽春の新学期。千佳はもう高等部二年生だよ。

第九二一回 弾む心、またはスキップする心。


 ――程好い肌寒さ。身の引き締まる中に於いても、温い春の風とその情景。



 今日から新学期。四月八日。


 土曜日だけれど、一時間ほどの内容……でも大事。学園の制服はブレザー制服。


 思えばもう、あと二年。僕らの学園生活。長いと思っていたけど、意外とすぐ。まるでまるで春休みの夢のよう。晴れ渡る春の日。明るい学園を僕らは築き上げる。


 これまでのことは、その準備。


 ここから始まるの、僕らの集大成。ある意味、誓いの春休みだった。僕と梨花りか可奈かなせつの四角関係から広がる生徒会の今後の取り組み。裏の世界を創らないようにと。


「ホントそうだな……」


 と、ポンと肩に手を置かれた。振り向けばそこには、


太郎たろう君、それにりんも、ひかる君も」……皆が皆。集う、朝を駆ける電車の中で。僕のそばには梨花と可奈。僕がこの学園の生徒になってからは、いつも三人一緒、これからも。


「皆でやるんだ、千佳ちか


「うん、そうだね。宜しくね、皆」


 と、僕は言う。以前では考えられなかったこと。身震いする程に、または鳥肌が立つ程な状況と言える。思えば、僕はこの学園で輝いていた。


 そして何もかもを手に入れていた。お金では買えない何もかもを。パパだけではなくお姉ちゃんも。太郎君も。凛とも仲直りができて、またお友達。脚は、すっかり治っているようだ。車椅子ではなくなっている。失ったと思ったものも帰ってきている。僕は、心が温まるのを感じた。もう満足……とも思えた時、ポンと手を置かれた。今度は、


「梨花?」


「まだ途中だよ、千佳。まだ満足の域には達してない。途中どころか、始まりだ」


 と、言った。鋭い刃みたいなイメージを、その言葉に感じた。そして同時に、ある種の覚悟みたいなものも感じていた。それを受け止める覚悟は、すでに持ち合わしていた。



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