第九一五回 進めば二つ手に入る明日へ繋がる物語。


 ――明るい日と書いて明日と読む。


 そして、夜が明けるのと同じ感覚を得る。選択肢は一つだ。



 時は進むものだから、自ずと進む方へと選択は傾く。ならば、失うものはないのだ。


 進めば、前向きになれる。過去を未来へ繋ぐことができる。旧一もとかずおじちゃんの切なる願いは、僕が引き継ぐ。それに……「僕もだよ、千佳ちか」と、僕の肩を叩く梨花りか


 お母さんの表情が変わった。


 初めて見る表情……僕の知らないお母さんの表情があった。喩えるなら、雨降って地固まるのような表情。一時的に過去は蘇るけれど、それは未来へ繋ぐため。いじめのない明日を信じて僕らは戦う。生徒会の戦いは、そこにあると僕は思う。そのために集った仲間たち。仲間たちは、僕を救ってくれたから、僕は恩返しがしたい。


 地に足が着いている。生きているからこそ、僕は皆と共に戦えるのだ。


 星野ほしのルーツを紐解くことは、僕らの未来への道しるべを意味していた。出会った仲間たちは、いずれも皆、正義の心を持っている者ばかりだ。それこそが切り札だ。


 明日は、時を越えたら今日になる。そして今日は、また明日へと進みゆく。今まさに駆けている。林道を。スーパー林道を。流れる緑の風景は、まるでこれまでの道程……


 黄色と黒のビッグな車。まるでジープのような形だ。


 皆が集っている車の中。進めば団結が手に入ると、せつは言う。そしてもう一つ、共有したこと。旧一おじちゃんの願いが共有できた。僕と梨花だけではなく可奈かなも、摂も。そこから広がる生徒会の人脈へと。末広がりのように……林道を抜けて見える、まるで白山のように。空気も変わる、大自然の空気へと。林道を抜けたのなら、信じられない光景。


 岐阜の方にまで繋がっていた。


 幻なのか目を疑うも、確かに飛騨の国……


 そこに登場するのは、赤い影。懐かしさを覚える旧一おじちゃん。芭蕉ばしょうさんも姿を見せていて、車内にいる人数も半端ない。とても賑やかで、想定外に賑やかで。



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