第九一四回 想い出は風に揺れ、星野ルーツの探索。


 ――それは糸のように繋がる。喩えるなら、一本の糸から。



 出会いから始まった。旧一もとかずおじちゃんが、星野ほしの家がこの地を訪れた時から。


 まだその頃は、僕らが生まれる遥か前で、まさにお母さん世代から、この物語は始まったと言える。それはお母さんがまだ……小学生の頃だったから、僕らの姿形はなかった。



 その当時は、まだ昭和五十年代。


 物語は瑞希みずき先生のお母さんが、まだ先生になりたての頃だった。初めて受け持ったクラス。初めての担任の先生を経験した。そのお話は誰から? 誰から聞いたのだろう?


 何時? 何処で? 今ここで。


 僕は旧一おじちゃんを目の当たりにして、語らいの場にいる。シンデレラの魔法が解ける時間までは後僅あとわずかだけれども、引き継ぐような内容の語らいだから只事では最早ない。


 心して――という意味。


 旧一おじちゃんは当時、瑞希先生のお母さんが受け持つクラスの生徒だった。でも、その時代からいじめはあった。陰湿と呼ばれるいじめ……僕がされていたいじめの数々、旧一おじちゃんも経験してきたと言っていた。自ら命を絶つほどだから、僕の想像を越えていたのだと思われる。僕の横には梨花りかもいる。お母さんだっている……パパも、この場に居合わせていた。つまりは星野一家が集っている。正直な所、いじめの波は昔より……


 想い出が繰り返されるように、歴史も繰り返されるけど、寧ろ拡大しているように思える二面性のある世界観によって、表と裏があるように。でも、願っていたの。


 旧一おじちゃんも願っていた。瑞希先生のお母さん、北川きたがわ初子はつこさんと同じ思いで。それは何時からと訊いてみる。その答えはほぼ即答。……即答に近かった。それは亡くなってから。取り返しがつかなくなってからと、彷徨い続ける魂の中で思っていた。


 自ら命を絶つこと。絶対にしてはいけないと、旧一おじちゃんの表情から窺える後悔の念。だからこそ僕は汲み取るの。生徒会の一員としての今後の在り方を……



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