第九一三回 千尋という名の、僕のお母さんのこと。


 ――まだ午後の面影を残す、この施設の宿泊の一室。


 この施設は、ホテルと繋がっていたのだ。小松市にも似たような施設はある。



 ここを出たなら、そちら方面へ向かう。当初予定していた白山の林道、バスではなくパパの運転で行くことになった。梨花りかも含めた四人と、可奈かなせつも皆一緒。……明日の夢。


 しっかりと楽しみにしている。


 皆一緒という意味には、芭蕉ばしょうさんも旧一もとかずおじちゃんも含まれる、夢のコラボが待ち構えている。パパの名前は新一しんいち、そして旧一という名前の旧一おじちゃん。今更ながら、とても縁を感じる名前たち。それに、旧一おじちゃんはお母さんのお兄ちゃんなの。


 もしかしたなら……


 物語は、そこから始まっていたの。旧一おじちゃんの物語から繋がっている。


 そのルーツを含めた、この度の旅路に、僕は深い共感を覚えた。それを紐解くということは、前に進むことを意味する。小規模でも冒険の部類に入るけど、手に入る。


 まるでRPGのような設定だけど……


 進まなかったら安全が手に入るけれど、進んだら、二つ手に入る。経験と、かけがえのないもの。きっと新たなるモチベーションを得ることができる。新展開と名乗るものだ。


 梨花も同じ考え。フッと息を吐く笑みを浮かべる顔。


 同じお部屋の中、お母さんと僕ら姉妹の語らいの場。


 夢でも見ているような感覚は、湧き出る思い出たちの仕業。お母さんと二人きりだった生活の中で培われてきたものは、今となっては革命というものに、その基準をも……例えば現在地。そのナビで調べるための現在地をも変わったものとなって、その進路にも多大な変化を齎していた。つまり、僕の物語は幾度も革命を起こしていたことになる……


 ボッチだった境遇は、今はもう忘却の彼方。旧一おじちゃんが願っていたこと。でも僕は思うの。初めから、ボッチではなかったように、そう思えてきたこと、今になって。


 そしてまた繋がる。千尋ちひろというお母さんの名前と、僕の千佳ちかという名前もまた……



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