第九一〇回 突入する時、歴史の意味を知ることに。
――突入したのは、大浴場。
ではなく、まずは、男性用の仮眠室。そこも広かった。身体が小さくなった分、周りが大きく広く感じるの。五人が五人、かたまって行動する。幼女でも五人集えば知恵も、力だってある。得意は其々違うけど、違うからこそ五種類の強みとなるの……
そして、通り過ぎる室内。
五人の目で見ても、そこにはいなかった。でも、ちょっと廊下へ出た時だ。
白く広がる光の中に見る……「パパ」と、僕は声になりそうになったけど、抑えた。その理由を模索するけど、その理由は、ちかちゃんにあった。目の当たりにしても無反応なのだ。ちかちゃんのパパは、僕が見たパパとは違う人なのか? そうはどうしても思えなかった。なぜなら、パパと会ったのは十三歳の時だ。それまでは顔も知らなかった……
目の当たりにいるパパは、若き日のパパ。
ここで声を掛けたのなら、きっと歴史は変わる……と、思ったから。
だとすれば、ちかちゃんの未来も変わってしまうから、躊躇ったの。ちかちゃんはパパを捜していたのだけど、それはまだ見ぬパパ。まだ今は会う時ではないと、思ったから。
手を引っ張る。ちかちゃんの手を引っ張って離れる。
ふと
梨花も、僕と同じ思想にあった。そして同じ決断を選んでいたのだ。
今は前に進む。これからだって。
すると見えたの、「ママ!」と、ちかちゃんが叫んだから。その瞬間だった。ボワッと白い煙が覆った。ちかちゃんから見れば、白煙が舞い上がった。白煙が消える頃、ちかちゃんの驚いた顔を見ることになる。そして「すっごーい! お姉ちゃんたち、魔法少女だったんだ」と、嬉々とする声。それに続けて「ママ、ママ、見た? 私と同い年の子がお姉ちゃんに変身したの」と、その嬉々とする声を、お母さんに向けた。
……そうなの。ちかちゃんのママは、僕のお母さんだった。正確に言えば、僕と梨花のお母さん。この意味わかるよね? 若き日のお母さんは、今の僕らを知らないから……
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