第九〇九回 ちかと千佳が探索する時、集う五人組。
――なので『探索ファイブ』と名乗る。僕ら四人にプラス一人となったから。
何を探索するのか? 目の当たりにいる、この子のパパとママ。どうやら迷子になったようで……と言いながらも、僕らも同じく迷子のようだ。第一ここが何処かわからない。
「僕らと一緒に捜そっ、君のパパとママ」と、僕は言った。
すると、グスッ……と泣き止んだ。「ホント?」と、潤んだ目で見る、僕のこと。
「ホントもホント、僕らも迷子なんだ。と、いうことで、君も『探索ファイブ』の一員だ」
と、肩に手を置く……「ねっ、ちかちゃん」と、名前も声にして。ちょっとばかり抵抗が……いやいや、自分と同じ名前なので、ちょっとばかり照れ臭いという表現なのか?
いずれにしても、ちかちゃんは笑った。
元気があれば何でもできるとの確信の中、僕らは探索する。
――薄暗い場所から明るい場所へ。
それだけでも心は軽くなる。玩具のドラムを奏で、玩具のギター。ハーモニカや、トランペット……もちろん玩具だけれど、歌声は本物の歌声。ちかちゃんが歌うの。音楽の教科書にあったような古い曲。NHKの教育番組にあるような歌……フォークが主流なの。
行進しながらの演奏。
思いの外、皆お上手。生まれる笑顔。
すると聞こえる水の音……この場所は、どうも『ルネッサンス金沢』のようだ。
初めて見る場所なので、迷子以前の問題だった。元々が僕ら四人、ここを探索することが目的だったのだ。薄暗いお部屋は仮眠室……と考えた方がごく自然。僕ら四人は女の子だから、その仮眠室は女性用と考えられる。なので、ちかちゃんはママと一緒だったと思われる。そこには謎が多い。僕らの身体が縮んだ原因も含まれそうだ。ちかちゃんはパパを捜しているそうなの。初めて会った時、「パパ、パパ」と泣いていたから。ちかちゃんが向かおうとしていたこの先は……そして僕らの身体は六歳児なので、まさかの……
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