第九〇八回 探りゆく原因、その渦中で起きる事件。


 ――僕は、いや僕らは探る、この状況に至った原因が何か。



 薄暗いこのお部屋の隅々も、そして、このお部屋自体が何のお部屋かということも。少しばかり飛び出す勇気も兼ねて、このお部屋から。続くのは廊下。ちょっぴり冷たい感じの廊下……と、いうことは、ホスピタル? それとも、とある研究所? 怪しい場所には違いない雰囲気。でも、辺りには薬は見当たらないの。僕らの身体を小さくしたお薬。


 予想が正しければ、カプセル状のお薬……


 そして聞こえる水の音。誘惑される程にまで身に染みるの。


 歩みゆくと、お部屋から外の世界。何処かで見たような片隅にある記憶……四人が四人とも同じ風景を見ていたとでもいうの? それを打ち消すような泣き声が聞こえたの。


 子供の泣き声。「パパ、パパ」と泣き声と共に、迫るの、心に……


 その泣き声を元に辿り着けば、女の子が泣いていたの。白いワンピースの女の子が。


 見た感じ、僕らと同い年。……ええっと、今の僕らの姿だから、六歳児……と、思われる。渾身の勇気。奮い起こす勇気も辞さず、駆け寄るその女の子のもとへ。


 どうしても、ほっておけなかった。


 それは僕だけではなく、皆同じだった。四人とも同じ思いになれた……


「君、どうしたの?」と、声を掛けたの。そうしないと後悔する、絶対に。


「パパ、いないの」「ママは?」「ママも、はぐれちゃったの」と、濡れたお顔で答えてくれたの。お顔を見ると衝撃が……何で? とも思うの。僕だけではないの。梨花りかだって関係のあること。世の中に自分と似た人間は三人いるというけど……可奈かなせつも、じっとその女の子の顔を見る。何度も何度も確認するように。どう見ても「似過ぎてる」と、声になったのには、数秒間もの時間を要した。或いは分単位に至っていたのかもしれない。


「君、お名前は?」


「ちか。六歳なの」……名前まで同じ? 漢字は? どう書くの? とも言いたかったけれど、多分まだわからないと思うの。僕の姿も小学生ではなく、幼稚園児の姿だから。



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