第一三〇章 新たなるエイプリールもウメチカ劇場。

第九〇六回 四月なだけに、四人は四角関係も再び。


 ――それはそれは、電車の中で起きたお話。四人が向かい合わせになった時から。



 キッカケは、旧一もとかずおじちゃんの言葉から。梨花りか可奈かなせつも賛同してくれた。四人で力を合わせて進む道程。ここからは、僕らが描く『奥の細道』だから……


「さあ、ここからどう進む? 千佳ちか

 と、可奈は訊く。唐突に……それって可奈の役目では? と思いつつも。


「僕が決めるの? やっぱりリーダーは可奈が適任だと思うし……」


「どうしてこう、千佳は自分からモブキャラになろうとするの? 自信がないから? そんなの言い訳だから。私は千佳の決めた通りの進路で行くから……」


 すると、摂はそっと、


「この件は、やっぱり千佳が主役。旧一おじちゃんだって、そう思ったから千佳に話したんでしょ。素敵じゃない、芭蕉ばしょうさんの名作、千佳が描くんだから。いいなあってね」


 そして、梨花は……


「ちゃんと仕上げようね、ウメチカちゃん」と、満面な笑顔で。皆が皆、僕にオールを預けたの。お舟を漕ぐためのオールを。なら、僕がこの物語を作る主人公となる……


 行きたい所はあるの。


 ずっとずっと前から。加賀を越えてメインは小松。でも、僕はもっと欲張りだから、金沢も行ってみたい。そうだね、大きな寄り道だ。そして温泉よりも大規模な場所へ。


 とある作品で読んだことがあった場所……


 ルネッサンス金沢という場所だ。と、いうことで金沢から始まる、僕らの『奥の細道』は、まずは大通りから専用のバスで出発となる。どういうところなのか? 僕らはこれから身をもって体感することとなる。何もかも初体験となる道程なの。


 大まかな道程は、勘と共に見えてきた。まずは金沢から小松へ。小松には林道があるという。その林道こそがメインとなる。二泊三日だからこそできるコースと仕上がる。


 無計画のように思えた旅路だけど、実は潜在的に仕組まれた旅路だったのだから。



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