第九〇二回 この広い野原いっぱいの祝福。


 ――門出を祝うという意味。今日の日は過ぎるけど、これから始まる旅路。



 北陸へ行くことを決意する四人。……初めは僕と梨花りかの問題だったけれど、せつ可奈かなも便乗した。「旅は道連れ世は情け」という具合に、まさにピッタリな台詞をもって。


 その夜、約束をする。

 皆で、その旅路の仕度をしようと。集う場所は、摂のお家。


 何でも揃えられるから。というのが理由。更に更に……「僕と梨花と可奈の懐を気にかけたから」とも言うのだ。上から目線。だけど、温かみのある台詞。


 そして、忘れてはならないのは、

 ――芭蕉ばしょうさんも一緒ということ。


 奥の細道は、北陸までも繋がっている。金沢、小松、加賀へと……僕らがまだ、生まれる前の、パパとお母さんの物語の頃から。つまり芭蕉さんは、お母さんを知っている。


 千尋ちひろという、当時は女の子のことを……


 その歩んだ道程こそ、奥の細道だったの。お母さんはそこで何を考えたのか? 芭蕉さんと何を語ろうとしたのか、謎を解くことも兼ねることになったの。


 向かう先には、何が残されているのか? 芭蕉さんも、それを求めている。泳ぐことはできるけど、あまりにも長い距離。電車という交通手段を用いることにした。


 お母さんが昔住んでいた場所は、紛れもなく北陸。

 旧一もとかずおじちゃんも一緒に、そこに住んでいたから。


 ならば、幽霊は芭蕉さんだけではなく、旧一おじちゃんもまた同じ。お母さんを見守ってきたという……コラボしていたと思える、この二人の登場するタイミング。


 この広い野原いっぱいの水分を補給する。


 流れるBGM。きっと、闇討ちを得意とするのは、得意中の得意と言える。

 芭蕉さんは美を闘気とする進展具合。それに便乗して、特にエアー方面だ。


「広がる青空。ちょうどその時間に見えたんだ、君たち二人のこと」と、琵琶湖に……



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