第八八八回 そしてゾロ目。八八八回が訪れ。
――その日は三月十四日。ホワイトと名のついた日。
何を隠そうホワイトデー。今度は男の子から女の子へお返しする番なの。
……とはいうものの、実はいうと忘れていた。今朝、思い出した。
と、梨花は言っていた。あくまで僕ではないから。
するとバッタリ、顔を合わせた。通学途上の電車の中で。「おはよ、
……お返し。そうなの、今日はお返しの日だった。
僕のあげたチョコのお返し。去年はどうだったの? そのエピソードはあった? 今回が初めての筈。だったら太郎君にとって初めての……「千佳、どうした?」と、聞こえる太郎君の声が。僕は慌てて「な、何でもないよ」と、答えたの。ここで言えないよ。梨花は目で語り掛けるけど。まるで催促しているみたいでいやなの。紳士というわけでもないけれど、それなりに大人の対応でありたい。そう、心に問いかけていると、
「ほら、これ」と、差し出した。
太郎君から僕へと。何と、とある小説サイトのシンボルでもあるトリさんの、ストラップほどの大きさの可愛いぬいぐるみ。早速リュックへの取り付けを試みた。電車の中ということもあって、あまり身動きができず、それなりに混んでいるから……すると、
包み込まれる、君の中へ。
グッと動く身体。支えてくれた。僕のこと……
「下車したら、取り付けてやるから」と、君は言うから、
「ありがと。とっても欲しかったの」と、僕は言ったの。
柔らかな、お外からの光。車窓から零れて、ふわふわと、そっとそっと……
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