第八八四回 トキメク心の赴くままに。道連れも含み。


 ――決行するその日。乗り換える電車。膨れ上がる人の群れ。



 と、いうことは、遂に訪れたの。この地に。太郎たろう君と二人で。

 共に歩む、鉄道博物館の敷地内。トキメク心は、繋いでいる太郎君の手を引っ張って、


「そんな急がなくても、まだ時間はあるから」と、太郎君が言うも、


「いっぱい見たいの。したいことも沢山あるんだよ。電車、動かすんだから。Nゲージって中々開かないんだから。太郎君もやるんだからね。僕と一緒に動かすんだから」


 と、僕は無我夢中。太郎君は笑みを見せて……


「これじゃ、俺がパパみたいだな。千佳ちかが子供みたいで」


「子供で結構。予行練習なんだよ、これも。太郎君に僕に似た子供ができた場合の、子供との遊び方。とっても大事なんだから。僕は太郎君のこと、パパって呼んでいい?」


「それだけはやめれ……見た目は高校生だから、別の誤解を招くからさ」

 と、太郎君はお顔を真っ赤にして言った。


 湯気が立ちそうな程に、僕はニンマリと、笑みを浮かべるイメージで、


「じゃあ、お兄ちゃんがいい?」


「その上目遣いは反則だ。普通が一番。高校生のデートは健全なものだ」

 と、目を泳がせながら言うものだから、まあ、この辺にしておこうと思って、


「じゃあ、健全なお付き合い。苺パフェ、新幹線が運んでくる喫茶店で」


「スイーツだな。……って、この施設にそんなコーナーがあったっけ?」


 ドキッとした。まさかのツッコミ。下調べはまだ不完全。だけれど、執筆は幕を待たなかったから。でも、ここはウメチカの世界。ロマンを高めるために必要なことだから、


「あるよ。ここは僕らの世界観だから」

 と、僕はある種の賭けにでる。


「そうだな。僕らのステージだったな」

 と、あっさりと太郎君は納得。誰かのステージでは決してないから。



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