第八八三回 冬から春へ変わる時、季節の変わり目に。


 ――春の温い風は時折感じるけど、まだまだ冬の風を感じる。



 その境目には、整理。心を整えるために、必要な儀式だ。冬から春の変わり目。小雪も名残惜しくもチラついていた。そこからだ、春の陽気はね。そして迎える路面の……


 路面電車が大好きなバンド。


 僕は、そのバンドが大好き。三月には二つの要素がある。舞う粉雪と、三月九日という日。その三月九日も、もうすぐ訪れる。前回は卒業式の日。中等部三年生の最後の儀式ともいえる卒業ソング。今年はまた違う趣……心に革命を起こす日とも言えそうだ。


 なら、


 やっぱり行きたい、鉄道博物館。


「俺が連れてってやるよ」と、颯爽たる名乗り。太郎たろう君が、僕に言った言葉。「連れてってやるから空けとけよ、予定。学校が終わったら、すぐ行くからな。平日だしな」

 と、続く男気溢れる言葉で締め括る。パッと明るくなっただろう、僕の表情は、


「太郎君、いいの?」


「前に約束したよな、今度は俺が千佳ちかを連れてくって」


 それって確か、中等部二年生の時の約束……去年を通り越したけど、まだ覚えていてくれたの? と、目は口程に物を言うけれど、「まあ、あれだな。正確には思い出した」

 と、太郎君は添える。包み隠さずその言葉を。


「ありがと。楽しみ」と、僕は笑みを見せるの、とびっきりの笑顔。鏡での確認はできないけど、きっとそうと確信に至る。その頃には、もう春の温かさだ。気温は上昇する。


 であるなら、


 ピクニックな趣で。ウッシシ……と笑い声も漏れていた。


 太郎君も、鉄道に興味を持ったのかな? 思い込みでも共感を得たことになるから。同じ推しを得る。僕と同じ推し。お家に帰って僕のお部屋には、レールの上でゼロ系が待機している。そして走らせて眺める。決まったレールの上だけど、充分な見応えだった。



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