第八八〇回 思えば、二刀流かも。


 ――或いは両立とも言える。ぬいぐるみとバンプラの夢のコラボレーション。



 小さい頃、僕にはその記憶がなかった。いつもお家の前で一人……


 ぬいぐるみもパパが初めて買ってくれたもの。パパといっても新一しんいちパパ。当時は二人のパパがいたから。本当のことを言うと、当時は梨花りかが羨ましかった。心の奥底では、嫉妬もしていたと思える。その時のお腹の中は薄汚く、ドロドロとしていたの……


(こんな優しいパパが、僕のパパだったら)とさえ、表向きは誤魔化しながらも、本音は思っていた。普段はいい顔して、お友達のように振る舞っていたから、可奈かなに便乗して真似ていただけだったように思う。……ちょっと俯き加減となって、そう思っていると、


「そんなことないよ」と、梨花は言った。


「どうしてそう思うの?」と、僕は言う。


千佳ちかは、とっても優しい子だから。僕よりも、何十倍も」


「梨花は、僕が妹で良かった?」と、(どうしてこんなこと訊いたのだろう?)と、瞬時に思うも、梨花は笑顔のまま、僕を包み込んで……「僕の妹は千佳だけだよ。僕には世界一の妹だから。ちゃんと、また巡り合えて僕は最高の思いだよ」と、優しくも力強く。


 梨花のバンプラたちと、


 僕のエブリアニメシリーズのぬいぐるみたちが、共に遊ぶという幼き日にしたかったことも実現できて、この遊びに僕も梨花も夢中になって、本当に小さい頃に戻ったような夢の世界へ、そのまま招かれたのだ。そしてシンデレラの魔法が解ける頃には、夢の中。


 スヤスヤと……


 いつしか僕らは眠りの中へ。二人仲良く同じベッドで、同じお布団の中に滞在する。


 お互いの体温を感じながら、温かく、温かく……


 ここから先は、春の陽気が期待されそうだ。明日は今日よりも春に近づく。満開な桜を見る頃、僕らの学年は上がる。もう大人に近づいている。成人年齢が十八歳とすれば、まだまだ子供と思っていたのに、もう二年を切っているの。僕らが成人を迎えるまでに。



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