第八七九回 思えば、回を重ねて。


 ――お題が『本屋』で思いが募る最中で、もうお題は変わって『ぬいぐるみ』に。



 ある意味、意外なお題。


 スマホで確認したのが、学園内の教室……今は給食の時間。


 本屋と同じく、あまりピンとこなかった。そのまま流される周りの雰囲気。給食ならではの会話。僕の周りには梨花りか可奈かな。それにりんも加わって……もう復帰していたの。


 ハッピーハロウィンの大怪我から、もう退院もして自宅療養も終えて、今ここに。

 詳しくは語ることのできない内容。なので、あまり質問もできないの。語ったなら、僕らはもう日常とは違う世界観を招くことになるから。……と、凛はそう言っていた。


 凛には凛の世界があるから、

 僕らは干渉しないことにしている。きっと、これからも……


 だから会話は、あくまで日常的なお話。今は『書くと読む』のアニバーサリー・チャンピオンシップの話題がブームで、誰もが知っているという、この教室内。給食を共にする各グループに分かれて、様々な角度から会話は溢れている。凛もまた例外ではなく、


 僕ら三人の会話に混ざっていた。ついこの間から。


「お題は『ぬいぐるみ』ねえ……」と、凛は言葉を漏らす。会話というより独り言。


「ぬいぐるみなら、いっぱいあるし……」と、僕もまた、間を持たすための独り言。


千佳ちか、書けそう? エピソード」と、梨花は訊くも……


「身近にあり過ぎて、どう書いたらいいのか。まだ真っ白なの、頭の中……」と僕。


「確かにね。千佳の部屋の中、ぬいぐるみが豊富だもんね。梨花とは違って、いかにも女の子らしいお部屋って感じで。梨花は歴史を刻むようにバンプラが飾られて、いかにも男の子の隠れ家って感じで……それにしても、あなたたち、見た目はソックリなのに、どうしてこう、趣味は真逆なのかな? まっ、とは言っても、今更だけどね」と、可奈。


 そこでふと思う……


(梨花は本当に、ぬいぐるみに興味はないのだろうか?)



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