第八七七回 思えば、もう開催し。


 ――まだ遠いと思っていたけど、あっという間だった開催日。そして開催時間も。



 正午、慌ただしい中で『お題』は、そっと表示されていた。そのお題は『本屋』と、スマホの画面に表示されていた。あまりインパクトはなかったけど、時間が経つにつれ、その難しさを感じた。本屋と言っても奥は深く……想い出の本屋さん。


 実は、まだ明かされていない物語があった……


 天気てんきちゃんと一緒に見つけた漫画だけではなく、天気ちゃんも知らない物語があった。


 僕がまだ、天気ちゃんと知り合う前で、


 とある小説サイトとも、梨花とも出会う前の頃。もちろん、その頃の名字は梅田うめだでもなく、星野ほしのでも、今の星野ではなく、旧タイプの星野。因みに新タイプの星野は今の僕だ。


 小学生の頃。僕が小学六年生の頃……


 季節は春で、まだ小学六年生になったばかりの頃……


 登校途中で、僕は通学路から逸れた。つまりは学校へ行かずにエスケープ。迷路のような路地裏を徘徊していた。何処にも僕の居場所なんてないと思いながら。……学校に行けば、いじめられる。お家に帰っても誰もいない。お母さんがいたら怒られる。以前は優しかったお母さんも、今は人が変わったみたいに、鬼のよう……何かにつけて僕を怒るの。


 叩かれたり……


 今朝も叩かれた。ちょっと赤くなっているほっぺた。

 思い出すたびに、零れる涙。ちょうどその時だ、声を掛けられたの。


「どうしたんだい、お嬢ちゃん?」


 と、男の人。おじちゃんと呼ぶには若いようにも思えるけど、背は高く、ダンディという言葉が似合いそうな……まるで、あぶない刑事さんのように。刑事さん? と、そこで思考は固まる。そして脳内で繰り返される単語は、まずいまずいまずい……絶対に訊かれる。「君、学校は?」と。それから補導され、お母さんに連絡が。怒られる。もの凄く怒られる……号泣の域に達する。「ちょっと君」と、困る様子のおじちゃん。そして……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る