第八六九回 やったぞ、決め手の必殺技で。


 ――名付けるなら、ポーラースターアタック。凍り付きそうな、北のお空をイメージした、真空派による切断技。ウルトラ・タロはその技を受けて、見事バラバラになった。



 太郎たろう君の名字は南條なんじょう……

 それに対抗して、北……


 僕の名字は星野ほしのだから、北極星となった。つまり北極星がポーラースターとなるの。美しさとは裏腹に残虐な技。それは偏に、太郎君に勝ちたいという一念の……そして恋する乙女の究極な想い。それが具体化した激しき姿とその模様。どの様に映った? 今の僕の顔、その表情とかは? 一先ずはここまでのようだ。沈黙であっても、暗黙の了解で。


 そして台所の時間。


「僕が作るから」と、一言添える、夕ご飯時。


 ここからはクッキング。寒い夜だから……と思っていたけど、気温は上がるらしい。僕は家庭の味に拘ろうと、お味噌汁を中心とした、和食に近いごく平凡な料理……って、


千佳ちかって料理できるの?」と、太郎君が訊くものだから、


「失礼な。お母さんと二人きりの時は、僕が作ってたんだよ、夕ご飯。……でも、簡単なものしかできないけど。これからは精進するからね、ダーリン」と、笑顔で答えるの。


 ……きっと笑顔だったと思うけど。鏡で映したわけではないから、未確認だね結局。そう思っていると、太郎君は「これで決定だな。俺のお嫁さんは」と、付け加えるから、


 ボン! と、脳内での効果音。


 きっと、お顔が真っ赤。で、それで更に更に……「寝る前に、一緒にお風呂しようか」と言って、「前に一回あったよね、お月様が見てるあの夜に」と、添える言葉。僕は(何言っちゃってるんだろう?)と思いながらも、そして太郎君はというとだね……


「まるでハネムーンだね、千佳」


 と、ウットリするような趣で。そのムードを高めるの。究極に恥じらう中でね、

 ついにできたよ、夕ご飯。と、テーブルの上で並ぶ、僕が作った家庭料理たち。



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