第八六四回 お泊り企画へと発展し。


 ――それは、この木曜日のこと。夕映えの会話の中で。



 寒い中でも綺麗な夕映え。その場所は図書室。よくあるシチュエーションに於いての静かな会話の中でだ。他愛もないお話が、どうしてか、この様なお話に発展した。


「明日の夜、俺ん家に泊まりに来ないか?」


 ……との展開に。何故こうなった? しかも、その明日というのは金曜日だ。太郎たろう君と二人きりの夜。太郎君のお母さんとお父さんは、ちょっとした旅行。夫婦団欒。


 再婚してからの、ちょっとした旅行だ。


 太郎君が気を利かしたのか? その真相は如何に? もしかすると、このことは御両親の公認のことかも? そしてまた、僕のパパとお母さんも公認の上で梨花りかまで。


 何の障害も、何の反対もなくスムーズに、夢のように事が運んだ。小説にだって、この様なスムーズさは有り得ない程で、現実は小説よりも奇なりということになる。


 その日を迎えるに辺り、あっという間に朝を迎えて、学園内に僕は身を置いていて、こうして席に着いて授業を受けている。幾何学よりも不思議な男女の関係へ、僕の思考は歩んでゆく。脳内に於ける世界観。そこは無限に広がる。……僕の未来に至るの。


 例えば、そう……

 女としての夢……


 するとトントンと、突かれる感触。指先で……


千佳ちか、またまた当てられたよ」と、梨花の声も添えて。そこでハッとなる僕。ガタッと音を立てて立ち上がって「す、すみません。もう一度、質問をお願いします」と、声を張り上げて言った。すると何? 皆が皆、クスクスと笑っている? それに先生も含めて。


「おいおい千佳君、それは何の授業だ? 数学の教科書も逆様で。もうすぐホームルームも終わるから、週末ゆっくり休んで、月曜からまた元気に頑張ろうな」と、そこには早坂先生が代理としてここにいる。今日は瑞希先生はお休みしていたから。月曜日からは、いつもと同じ日常? いやいや、激動している今の世の中。コロナ禍でも一変して……



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