第八六二回 広がるお空から小雪に。
――それは帰り道。何処までも広がるお空から、チラチラとホワイトな演出。
並んで歩く僕らに、ロマンチックなムード。
女の子がトキメクのに充分な寒気。距離を縮める繋ぐ手の温もり。少しでも温かい場所へと急ぎ足。だけれど、お互いの歩くペースを気にしながら、見つめ合う瞳と瞳……
「あのっ」
と合唱。呼吸もピッタリに。それが余計に、お顔を熱くした。
「そちらから、どうぞ」と僕は言う。上目遣いになる身長差を意識した。僕の身長も、あの頃より伸びたけれど、男の子の伸び具合には敵わない。
「また伸びた?」
「ああ。
キュンと胸が鳴るのを感じる。ギュッと……身を寄せていた。
もうすぐ駅。学園から歩いて、ずっと二人きり。語り合いに夢中で、時間の経過を忘れていた。お空も夜の景色になって、そこからチラつく小雪。バレンタインデーの今日の日を、ロマンチックに飾ったの。息も白く、寒いはずだけれど、胸もお顔も熱くなった。
こんな時は洒落た喫茶店だけれど、
駅にはバーガーショップが、その役割を果たすのには一番の温かな場所になる。きっと何処でも良かったと思われる。大切なことは、あなたと一緒にいること。熱々でジューシーなハンバーガーが食道を通る感覚。向かい合わせの席で、綻ぶ顔が見える。女の子よりも男の子の方が食する量は多く、そこに逞しさを感じる。食べ盛りな年頃のようだ。
「どうした? じっと俺の顔を見て」
「男の子って、やっぱり女の子と違うなって思って」
「まあ、違うから興味津々てことかな……」と言いつつ、太郎君はマジマジと僕を見るものだから、お顔から、ええっと……視線は下へと、って「ちょ、何処見てるの?」
「男の子と女の子の違い。千佳に興味津々ってことだから」と、太郎君は答えた。
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