第八六〇回 ゆずれない夜、涙はお星様になって。


 ――台所に向かう僕。俯き加減の心を、梨花りか可奈かなはフォローしようと共にする行動。



 涙が溢れる中でも僕は作る、手作りのチョコ。イメージは土星。輪っかの中に球体を。


 心のギアが噛み合うように、その願いを込め……ううん、もっと強い想い。一念という言葉が相応しくも、心は君の傍へと。君のこと、もっと知りたいから。


 このチョコに込めるものは、僕の気持ち。

 君のことを大好きな僕の気持ち。思い返すも、僕は我儘ばかりだったの。


 いつも君は、僕を守ってくれた。


 夜空に輝く星たちのように。僕はすぐ調子に乗るから、君のこと解っている気でいただけで、本当は何も解っていなかった、君のこと。そんな僕が君にできること。


 大好きな想いを込めること。このチョコに……


 サタデーナイトをイメージする、少しばかり冒険の恋を綴った土星。熱で溶けるチョコは、その形を自由自在に変えてゆくから、熱いうちに……冷たいなんて言わせないから。


 君の心を包み込めるくらいに、

 僕は君を愛するから。こんなにも大好きだから。


 すると梨花は、


千佳ちか、きっと太郎たろう君は誰よりも千佳が好きだから」


 そして可奈は、


「心配ないない。きっと今日の太郎君は機嫌が悪かっただけだから。明日になったらケロケロして、千佳のチョコを『美味しい美味しい』と言って食べてくれるから」


 梨花と可奈、二人の気持ちで胸がいっぱいで、また泣けてきちゃって……


「涙を流す女の子の想いは、誰よりも強いから」

 と、梨花は言う。そんな梨花にも涙が浮かんでいて……そう見えたの。今でも梨花は太郎君のことを想っているの? そう思っていると、そっと梨花は、


「明日、一緒に渡そう。三人で。僕も可奈も千佳が大好きだから。大切な妹だから……」



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