第一二〇章 目指すゾロ目。二月二十二日もまた。

第八五六回 三年の連鎖は、姉妹の関係にもまた。


 ――あの衝撃の事実から、もう三年を迎えようとしている。



 ちょうど三年を迎えようとしているの。満三年……この二月二十二日がそうなの。冬の散歩道が似合う帰り道。僕と梨花りかが一卵性双生児ということを知った日。お母さんのお腹の中で一緒にいた筈で、しかも同じ日に生まれたのに、十三年もの歳月が経ってから知ったこと。似すぎるほど似ている素朴な疑問にさえ、妥協なくアンサーを迎えたのだ。


 梨花には容赦のない衝撃だったのだけれど……

 僕は梨花が姉で良かったと、胸を撫で下ろしていたの……


 梅田うめだに姓を変えたばかりだったけど、梅田になったお陰で、僕はウメチカというタイトルに至った。梨花に出会う前に、ティムさんに出会ったのも、また運命ということ。


 ティムさんに会えていなかったら、

 僕は……もしかしたら、今こうして梨花に会えることなどなかった。


 思えばそれ程までに摩訶不思議だ。運命といっても過言でなかった。


 しかも舞台は、梅田の地下。


 それもまたウメチカなのだ。まさに切っても切れない縁。その宿縁深き場所で、僕は売り子をしていた。誰かに脅されていたからではなく自らの意思。違法チケットを売っていたから……その内容も、実は詐欺。とある劇団の名を拝借して、道行くお兄さんとおじさんたちの興味を示す内容で、僕にはまだまだアダルトな内容のチケットだった……


 でも、その内容は架空のもの。そこが決め手となる。


 そこが決め手で、梨花は僕と間違われて、警察に補導された。そのチケットを売ることは、ティムさんのアイディアだった。チケットをつくったのも、ティムさんだった。


 ティムさんの友人。名も場所も。チケットをつくっている場所。チケットをつくった人の名前も、僕の知る由もなかった。ただ、チケットを売ってお金を手に入れたのなら、お母さんは優しかった。不登校も不問としてくれていた。……何よりも、鬼の面を外した顔を。お母さんに笑顔が戻ったこと、怖い思いをしなくて済んだことに甘んじていた。



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