第八五二回 開かずの扉は二つも。
――これまでに出会った数だ。開かずの扉……だったドア。つまりは二か所目。
第一は、芸術棟のアトリエのドア。
第二は、ここ。職員室と校長室の境の場所にあるドア。
もしかしたら、まだあるのかもしれない。まだ僕の知らない開かずの扉が。喩えるならば、
「
と、千歳ちゃんはウキウキした様子だ。眼鏡の男の子も一緒になって。
ここは、その境の場所。職員室と校長室の境の場所にあるドアから、招かれて入室したお部屋だ。学園内とは思えないような応接室。まるで何処かの企業の社長室のような趣。
男の子は、まるで小公子のような、その様な風格を感じる。
名乗る。ついに男の子は名乗るの、自ら先に名乗ろうとしたその時だ。ドアが開く、勝手に独りでに。自動扉? そんなわけもなく、人の手によって開けられたの……
「連れてきました、
と、少女の姿が。名札を見ると
なら、松近という男の子は僕と同じ学年か、或いは中等部三年生ということになる。そう思考を重ねていると……「おっ、
「
……だったの。「どうしてここに?」と、僕も太郎君も呼吸もピッタリに同じ質問。
するとクスッと笑う太郎君。「えっ、何々?」と、僕は思わず問う。
「ウメチカにマツチカ……ごめんだけど、個人的に面白くてな」と言いつつ、堪える笑いを。でも、僕もまたクスッとなった。連鎖する笑い。笑う門には福来るとなろうとも。
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