第一一九章 桃栗三年柿八年へ、心機一転。

第八五一回 令和五年の二月二日。


 ――それは、この物語が始まってから三年を迎えた日。三歳のお誕生日を迎えたのだ。



 あの日も同じ、とある小説サイト『書くと読む』の毎年恒例のお祭りともいえる『カクヨムコン』……つまり大きなコンテストが終わって、その熱気もまだ続いている頃。


 梨花りかが執筆してきた長編の『りかのじかん』の完結に、何とも言えない興奮や、今度は僕が、その執筆の味を知りたいとの好奇心というのか……とにかく書きたい思いが、


 脳裏に囁く、思い溢れるようにと奥深くから、

 まるで火山、噴火するように。それともマンホールの蓋が浮かぶ程の溢れる思い。


 トキメキにも近い、心躍る趣。どう表現していいのかわからなくなる程にまで募り募って、その理由も重なり合って……油絵のように、深みを増しながら募る、募る……


 そして始めた『ウメチカ』


 ここから僕の新章が始まった。梅田の地下での出会いから始まった物語。今は星野ほしのだけれど、当時は梅田うめだの名字を頂いた。それにより、僕も『ウメチカ』となったの……


 梅田千佳ちか


 そのフルネームになったことを機に。


 しかしながら、僕に梨花の続編は作ることはできず、あくまで僕の物語だ。物語と言っても、僕が体験したこと。まさにノンフィクションの、僕の作品。まだ走れる……


 桃栗三年だけれど、柿は八年。

 僕はまだ走りたい。柿は八年だから、まだ『ウメチカ』で綴ってゆくと決める心。


 今日は、まだ平日。


 歩む廊下で、見えるのは白昼。通りかかる職員室と校長室の境の場所。そこに扉があるの、茶色をしたドアが。何のお部屋なのか? 僕は知らない、開いたところも見たことがなかった。この三年もの間。それが……それが今日、ついに開いたの、そのドアが。


 バッタリだった。バッタリ出会った、千歳ちとせちゃんと……


 初めて見る、眼鏡をしたイケメンな男の子。三年もの間、初めて見る顔だったの。



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