第八五〇回 募る想いは、雪景色のように。


 ――深々と降る雪。教室の窓から見る。……いいえ、ぼんやりと眺めていた。



 気配を感じない程の、募る想い。

 思えば綴ってきたの、これまで。


 もうすぐ三年になる、とある小説サイト『書くと読む』で連載を開始してから。僕の募る想いの集大成が『ウメチカ』だから。僕の青春を赤裸々に綴った不思議な物語。



 ――現実は小説よりも奇なり。


 そう言っても過言ではない出会いの数々。この度もコンテストにエントリーだ。


 エントリーする度に、新たなエピソードが増えている。摩訶不思議なエピソードが、このウメチカには集まっているの。梨花りかが僕の双子の姉ということ。とても衝撃だったと今になって思う。なぜ出会えたのだろう? それも、僕と間違えられて補導されたことから始まったのだから。……奇妙な出会い。いや、正確には再会と言うべきだろうか。


 お友達から始まって、今や姉妹。可奈かなも正確には、僕らの従姉の関係にあった。


 それを知ったのは、赤い狐と緑の狸がキッカケだった。


 まさに今のような、深々とする寒空。こんな時は窓からお外を眺めるのには最適。そんな物静かな時間なの。するとトントンと、横っ腹を突かれて指で……


「梨花?」


 隣の席は梨花なの。姉妹仲良く座っている。


千佳ちか、当てられてるよ。ほら、ここから。立って読む」と言うものだから、すくっと立ち上がって読む、教科書を。二百二十二ページ。ゾロ目から。ゾロ目といえば、ウメチカが始まった日だ。令和二年の二月二日。そして梨花が双子の姉妹とわかった日。その日もゾロ目で令和二年の二月二十二日……数字としても面白い程に不思議なことで、


 クスクスと笑い声も聞こえる。すると「千佳、教科書が逆様だよ」と、梨花の声……


 ササッと持ち直す教科書。僕はきっと、少しばかり顔を赤くしていたと思う。



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