第八四九回 今宵の夢は一富士二鷹三茄子。


 ――そうなれば、縁起の良いお話。就寝時刻を迎えた。灯りは消した。



 今宵は僕のお部屋。さっきまで走っていた模型のゼロ系も、僕と同じでお休みの時間を迎えていた。……或いは、玩具箱から飛び出した玩具たちと一緒にレッツ・ダンシングをエンジョイするのかもしれない。僕もまだ、シンデレラの魔法は解けていないから。


 エブリアニメの世界。


 その中に僕は……正確に言うなら、僕らということになる。同じベッドのお布団の中で一緒にお魚になって、泳いで季節外れの鯉幟こいのぼりのように満喫している。楽しんでいる。


 梨花りかが「一緒に寝よっ」と言って、枕まで持参で、このお布団に入ってきた。


 僕は……僕は次第に心地よくなってきた。心地よい程、梨花と密着していた。


 鼓動。僕とは違う鼓動。立体感から体温も。息遣いも、何もかもが愛おしく思える。お母さんのお腹の中に、僕と一緒にいた子だから。その頃のことを、脳内よりも深く潜在した場所で感じている。言葉で表現するには、遥かに超える僕の語彙力。表現力をも。


 もうすでに夢への誘いに乗っている。


 梨花と一緒に泳ぐお布団の中。そこから繋がる広大な世界。母なる海のよう……


 演奏も聞こえる。グローバルな演奏。


 エブリアニメの音楽隊が、戦いなんてつまらないと言わんばかりにマーチを奏でる。そして出陣ではなく行進も奏でる。見せる演奏を心掛けているのだ。


 空にキラキラお星様は、やはりラッキースター。僕がこのエッセイを始めたばかりの頃を彷彿とさせた。その頃は、クリスマスキャロルの頃で、Xマスイブの夜を飾った。


 喩えるならば、今のように……


 富士山は見える。ゼロ系が走っている東京に向かって……縮図。模型だから。でも爪は隠す、その様を見守る、鷹は隠しているの、その向こうにある広大な思想と景色を。


 あとは茄子だけれど、禁断の果実にも似た柔らかさだ。


 ――チュッ。と重なる。柔らかで、少し湿った感じの。僕の唇が梨花の唇に……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る