第八四二回 僕が、小説サイトと出会った日。


 ――木枯らし一号! もうそんな時期なのか? 炬燵で丸くなる、まるで猫のように。



 でも現実は、衣類でさえ冬物は中途半端。お昼と夜の温度差があり過ぎる。なので、今は炬燵ではなくベッドのお布団の中で、梨花りかと一緒に丸くなっていた。


 その中での語り合いだ……


 第八回の『書くと読む』のコンテストにエントリーする作品について。あくまで二人だけの協議会を開いたのだ。僕は今も印象に残っている、梨花の初期の頃の文章……あの文章こそが、僕に衝撃を齎したのだ。それは生まれて初めての出会いだった。梨花が教えてくれた『書くと読む』という小説サイト。そして初めて読むスマホで見た作品……


 梨花が描いたエッセイ。りかのじかん。


 その日を境に、僕は読書というものを意識した。それまでは雑食。立ち読みで得た知識だ。今だからこそご本を……と思うも、現実はスマホやPCの画面で処理されるの。


 同じ年の女の子の心情が、

 僕の心に入ってくる。まっすぐストレートに。


 そして溢れる涙は、まるで僕の心の柔らかい部分を引き出すかのように、硝子の曇った部分を洗い流していったの。瞳に映る夕映えが、心に染みた瞬間だった。その場所は総合病院の中庭みたいな場所で、ベンチに腰を掛けていた。


 その続きを読みたくて、明日が楽しみになっていた。


 僕が憧れている文章は、まさにその文章だったから……すると、梨花の顔がとても近くにあって、お布団の中で。息遣いもハッキリと感じる距離で、ギュッと抱きしめられた。


「ちょ、ちょっと、梨花?」


「えへへ、千佳ちかがあまりにも可愛いものだから」


 体温を感じる、梨花の体温。鼓動も、心臓の鼓動も。すると何だか急にウトウトと……睡魔に誘われている感じ。癒される何時しか、そして恐らく……夢の中へ気持ちよくも。


 二人で作り上げる短編。新たなるエッセイを、これより綴ってゆくから。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る