第八三八回 ゴーゴーと。または行け行けと。


 ――深まる秋のゴーツートラベルならぬ、ちょっとしたトラベリング。散歩道など。



 来夢来人らいむらいとでのお仕事を終えた後の、まあプチデートといった感じのこと。発案者は僕ではなく太郎たろう君。発案したその場所は、梅田の地下を奥深く歩んだ地下を通ずる鉄道で。


 来夢来人の最寄りの駅は通称『淀に架けた橋』……そこから僅かな距離だった。


 帰り道から寄り道へと転じて、そこからの散歩道から、プチデートに至ったの。



 並んで歩く僕らの服装は……


 お世辞にもお洒落とはいえなく地味なもの。


 でも、これはこれで今の時期には溶け込んでいるモノクロなスタイル。つまりは白と黒で飾られている。銀杏並木の季節に合わせたと言っても過言ではない程。


 今はもう、三年となる。


 僕がターニングポイントを迎えてから。まさしく梨花りかたちの出会いが、僕にとっては運命の時だったのかもしれない。夢見る乙女の心境にも似たロマンを胸いっぱいに感じた。


 見える景色が一変した。喩えるならモノクロからカラーへ。そんな景色を、あの日を境に、僕は見ることができた。何があっても生き続けるという……色んな人たちが僕と縁して味方になってくれたから。あの日を境に、不思議なことに……


 歩むと、歩んだら、


 ここはマルチメディアの中心部ともいえる通称『日の本に架かる橋』……梅田の地下の向こうにある二大橋ともいえる繋がり。架けた橋に架かる橋。僕らはその橋を渡った。


 太郎君と並んで行くその先は、


千佳ちか、ここだ」と言って、向かう先はその五階。エスカレーターを上がる。


 ……模型店? そうなの。模型専門店。梨花が喜びそうなバンプラは二階にあったけれど、五階に上がったのはお初……初めてのこと。模型は模型でも広がる鉄道の世界だ。


「わあ」と歓喜の声を上げる僕。「今日のご褒美だ」と太郎君は笑みを浮かべていた。



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