第八三七回 人が夢を連れて来るそんなお店。


 ――それが、来夢来人らいむらいと



 慣れないうちにピークを迎え、アタフタやバタバタと。ガッシャ―ンという擬音も奏でながらも、やっと……漸く乗り切り今現在。一息を吐いて脳内整理が生理的に行われた。


 一遍に……

 様々なタイプの人々に挨拶をした。……することになった。


 できる仕事は限られる。秒単位のお仕事。せめてもの挨拶とスマイル。そしてお水を丁寧に置くこと。単純なお仕事に思えるけど、印象の変わりやすいデリケートなことなの。


 注文は、太郎たろう君が取ってくれる。


 ずっと、息の合うペアー。そして食器洗いの連係プレーも。


「こうしてみると、驚くべきシンクロだな」


 と、しょうさんは椅子に腰かけて僕らを見る。初めて会った時よりかは澄んだ瞳。穏やかな顔になっていた。出会いはもう一年も前だ。とてもとても時の経つのが早く思えたから。


 休日は特に……


 午後からの時の流れは、予想を超える程に早く、某国民的アニメのお時間まですぐだ。


「さあ、お疲れ様。二人に俺からの奢りだ」


 カウンターの席。置かれたのは特製のラーメン。翔さんは、また新たなるメニューを編み出したのだ。ラーメン道と出会えて、翔さんはその道に夢中。もう板についているの。


「まだまだ……

 俺は修行中の身。師匠から習うことは沢山あって……」


 と滲み出る翔さんの表情から、その道の険しさ。……察する。さっきのピーク時がまさにそれ。生きるために食すこと。ママは子のために、この険しき道を歩んでいた。初めの頃を思い出す。このエッセイの初期の頃。お母さんが戦ってきた社会の荒波。……身に染みる思い。噛み締める。このラーメンの美味しさは特別なもの。またこの味を、また味わうために、僕はまた来る。太郎君と共に、またこの聖地ともいえる来夢来人へ。



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