第八三二回 とある音楽のマーチングソング。


 ――帰り道もまた行進となる。聖者の風格をもって歩く。縦横無尽に並んで。



 そして着いた場所といえば……


 学園の門を潜って芸術棟。久しぶりの休日の学園内。……懐かしさに浸っていると、それも束の間で、驚きに変わった。そこはもう、未知なる世界になっていたから。


 確か、確かだよ……


 芸術棟に地下室ってあったの? しかもその入り口は、極めて出入り口にも近くて階段も、しっかりしたもの。夢のようにも思えたけど、今現実に、千歳ちとせちゃんと菜花なのかちゃんを先頭に案内されている。その広さは……結構広い。しかも最新技術を自ら主張している機器類。そして僕の胸は弾む。まるで秘密基地だ。戦隊ものの秘密基地のように、


 ――超カッコイイ!


 その思いは梨花りかも同じ。僕以上に梨花の方が、この光景は大好物なの。それが証拠に目の輝きがもうMAX。それでも、少しは落ち着きを見せる。ちょっとは大人という見栄も張りながら。中等部一年生の後輩の前だから。僕らは高等部一年生。どちらも一年生に変わりはないけど、ピカピカの種類が違うのかもしれない。僕らは、この子たちをフォローする側になるの。今はもう自宅療養となったりんが、この子たちの面倒を見ていたように。


 凛は今、リハビリに励んでいる。


 入院した原因は……敢えて訊かなかった。多分、僕らは踏み込んではいけない場所に思えたから。でも信じている。凛の思いもまた僕らと同じ。もう裏も表もなく、明るい世界の中で情報屋も生徒会も共に手を取り合える日々が訪れることを。それこそ戦隊もののように立ち回る。多かれ少なかれ僕も、戦隊ものは好きだから。


 その話題から梨花は、突然変わる。「わわっ」と声。歓喜の声にも思える声。皆でバンプラ。東洋の魔女に似たネーミングの機体を組んでみた手応え。


「ああっ、なにこれ、すっごーい。これが……魔女の精度。無塗装の無改造で」


 と、恍惚な笑みをも見せる梨花。どちらかといえば、そんな梨花に皆が驚いていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る